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■前集109項

怨因徳彰。
故使人徳我、不若徳怨之両忘。
仇因恩立。
故使人知恩、不若恩仇之倶泯。

怨(うらみ)は、徳(とく)に因(よ)りて彰(あら)わる。
故に人をして我を徳とせしむるは、徳と怨みの両(ふた)つながら忘るるに若(し)かず。
仇(あだ)は、恩(おん)に因(よ)りて立(た)つ。
故に人をして恩を知(しら)しむるは、恩と仇との倶(とも)に泯(ほろ)ぼすに若(し)かず。

怨は、人徳との対比で彰(あきら)かになる。
故に、他人に徳を感じされることより、徳も怨も両方を忘れる方が良い。
仇は、恩恵との対比で立っている。
故に、他人に恩を感じさせることより、恩も仇も共々に消える方が良い。
つまり、人徳と怨み、恩と仇、善と悪、良と否、好き嫌いなどなどは一線の両端にあるものだから、どちらかに傾けば反動で反対側に振れてしまう。だから、其の両方に心を奪われなければ安心があるということ。
言い換えれば、活人は、二元論が生む不安と決別し、一元論が与える安心を得ていると言える。
慧智(030615)