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■前集171項

為鼠常留飯、憐蛾不点燈。
古人此等念頭、是吾人一点生生之機。
無此便所謂土木形骸而已。

「鼠(ねずみ)の為に常に飯(めし)を留め、蛾(が)を憐(あわ)れみて燈(ともしび)を点(つ)けず」。
古人の此等(これら)の念頭(ねんとう)は、これ吾人(ごじん)の一点の生々(せいせい)の機(き)なり。
此れ無ければ、便(すなわ)ち所謂(いわゆる)土木(どぼく)の形骸(けいがい)のみ。

「ネズミの為にいつも飯を残しておき、蛾を可愛そうに思いランプをつけない」(蘇東坡「蘇軾詩集39巻」の詩)
昔の人のこのような心使いが、我々が生きてゆく上での重要な心がけである。
このような心がけが無ければ、我々は土や木で出来た人形と同じような心の無い存在なのだ。
つまり、人間として生きて行く、ということは全ての生命に畏敬の念を持つことなのだ。
言換えれば、活人は、生命を軽視する人間は、単なる人間の皮を被った抜け殻にようなものだとして排除しておくことだ。
慧智(030628)