«« ■前集215項 | メイン | ■前集217項 » »

■前集216項

天賢一人、以誨衆人之愚。
而世反逞所長、以形人之短。
天富一人、以済衆人之困。
而世反挾所有、以凌人之貧。
真天之戮民哉。

天(てん)、一人(いちにん)を賢(けん)にして、以て衆人(しゅうじん)の愚(ぐ)を誨(おしえ)んとす。
而(しか)るに世(よ)は反(かえ)りて長(ちょう)ずる所(ところ)を逞(たくま)しくして、以(もっ)て人の短(たん)を形(あら)わす。
天(てん)、一人(いちにん)を富(と)ましめて、以(もっ)て衆人(しゅじん)の因(くるしみ)を済(すく)わん。
而(しか)して世(よ)は反(かえ)りて有(ゆう)する所(ところ)を挟(さしはさ)みて、以(もっ)て人(ひと)の貧(ひん)を凌(あなど)る。
真(まこと)に天(てん)の戮民(りょうみん)なるかな。

天は大衆から一人を選んで「賢者」として愚者を導かせようとしたが、現実の世で賢者は天の意思を無視して、その智慧を振り回し、大衆の愚のみを暴いてしまった。
天は大衆から一人を選んで「富者」として貧者を救済させようとしたが、現実の世で富者は天の意思を無視して、その財貨を振り回し、貧者の苦しみを侮(あなど)ってしまった。
このような賢者と富者は天罰を受けるべき罪人である。
つまり、偶然に賢者となり、偶然に富者となった者は、それを「使命」と理解し、活人としての自覚を以て、恵まれた才能や財産を活用して世の中に貢献すべきであるということ。
言い換えれば、活人は「自分の弱点」を嘆くのではなく、「人それぞれの強み」を発見して活かし、それを資源として認識し、社会に貢献しなければならないのだ。
慧智(030706)