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■後集36項

山林是勝地、一営恋便成市朝。
書画是雅事、一貪癡便成商賈。
蓋心無染着、欲界是仙都。
心有係恋、楽境成苦海矣。

山林(さんりん)は是(こ)れ勝地(しょうち)、一(ひと)たび営恋(えいれん)すれば、便(すなわ)と市朝(しちょう)と成(な)る。
書画(しょが)は是(こ)れ雅事(がじ)、一(ひと)たび貪癡(どんち)すれば、便(すなわ)ち商賈(しょうこ)と成る。
蓋(けだ)し、心(こころ)に染著(せんちゃく)無(な)くば、欲界(よくかい)も是(こ)れ仙都(せんと)なり。
心(こころ)に係恋(けいれん)有(あら)ば、楽境(らっきょう)も苦海(くかい)と成(な)る。

山林は素晴らしい所だが、一旦そこに住むことに拘れば市街地になってしまう。
書や絵画を愛でる事は優雅だが、一旦それに無我夢中になると商売になってしまう。
思うに、心に拘りや囚われが無ければ、俗世間でも達人が住むに相応しい理想郷となる。
心に執着する何かがあれば、安楽な場所でも、苦境となってしまう。
つまり、何事に付け必要以上に執着すれば、思い描く世界とは正反対の世界が実現してしまうということ。
言い換えれば、達人は、何事も“あるがまま”を尊重し、囚われず、拘らず自然体で生きて行くのが望ましいということ。
慧智(030714)