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■後集42項

竹籬下、忽聞犬吠鶏鳴、恍似雲中世界。
芸窓中、雅聴蝉吟鴉噪、方知静裡乾坤。

竹籬(ちきり)の下(もと)、忽(たちま)ち犬(いぬ)吠(ほ)え鶏(とり)鳴(な)くを聞(き)けば、恍(こう)として雲中(うんちゅう)の世界(せかい)に似(に)たり。
芸窓(げいそう)の内(うち)、雅(まさ)に蝉(せみ)吟(な)き鴉(からす)噪(さわ)ぐを聴(き)けば、方(はじ)めて静裡(せいり)の乾坤(けんこん)を知(し)る。

竹垣の傍で、犬が吠え、鶏が鳴くのを聞くと、雲の中に居るような気分になる。
書斎に居て、セミが鳴き、カラスが騒ぐのを聴くと、その時はじめて静かな環境に居ることに気が付く。
つまり、恵まれた環境に気付くのは、それが乱された時なのだ。
言い換えれば、自分では達人だと思っていても、その心が乱されそうになった時、自分の心に気付くのだろう。
慧智(030718)