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■後集45項

春日気象繁華、令人心神駘蕩。
不若秋日雲白風清、蘭芳桂馥、水天一色、上下空明、使人神骨倶清也。

春日(しゅんじつ)の気象(きしょう)は繁華(はんか)にして、人(ひと)の心神(しんしん)をして駘蕩(たいとう)ならしむ。
秋日(しゅうじつ)の雲白(くもしろ)く、風(かぜ)清(きよ)く、蘭(らん)芳(かんば)しく桂(かつら)馥(にお)い、水天一色(すいてんいっしょく)に、上下空明(じょうげくうめい)にして、人(ひと)の神骨(しんこつ)倶(とも)に清(きよ)らかならしむに若(し)かずなり。

春の天気は、万物に元気と華やさを与え、人の心に癒しとゆとりをもたらす。
秋の日和は、雲は白く、清らかな風が吹き、欄や桂が香り、水面も天空も青一色となり、月は水面に影を落としてなお輝き、人の本心までも清らかにする。
つまり、活人の活躍は春の日に、達人の達観は秋の日に喩えられ、春も良いが、秋はもっと良いという。
言い換えれば、達人は秋と冬の楽しみのような落ち着いたもので、活人は春と夏の楽しみのように溌剌としているが、秋冬の落着きには及ばないと言えるのかもしれない。
慧智(030715)