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■後集70項

晴空朗月、何天不可翺翔、而飛蛾独投夜燭。
清泉緑卉、何物不可飲啄、而鴟鴞偏嗜腐鼠。
噫、世之不為飛蛾鴟鴞者、幾何人哉。

晴空朗月(せいくうろうげつ)、何(いず)れの天(てん)か翺翔(こうしょう)すべからく、而(しか)るに飛蛾(ひが)は独(ひと)り夜燭(やしょく)に投(とう)ず。
清泉緑卉(せいせんりょくき)、何(いず)れの物(もの)か飲啄(いんたく)すべからく、而(しか)るに鴟鴞(しきょう)偏(ひと)えに腐鼠(ふそ)を嗜(たしな)む。
噫(ああ)、世(よ)の飛蛾鴟鴞(ひがしきょう)と為(な)らざる者、幾何(いくばく)の人りや。

明るい月が浮かぶよく晴れた大空は、空中のどこにでも自由自在に飛べるようなものだ、飛び回る蛾(が)は、自分から火に飛び込んでくる。
清らかな泉や緑の草花は、どれをして飲めなくもなく、食べられないものはないのに、フクロウは腐ったネズミの肉を食べる。
ああ、この世の中の人間で、あの蛾やフクロウのようにならない者が、どのくらいいるだおるか。
つまり、俗人とは、月や草花のような自然の手本があるのに、蛾やフクロウの
ような動きを殆どの人がしている。
言換えれば、達人は、俗人と共にあっても、月や草花のように自然体で在り続けれれる人ということなのだ。
慧智(030718)