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■後集90項

万籟寂寥中、忽聞一鳥弄声、便喚起許多幽趣。
万卉摧剥後、忽見一枝擢秀、便触動無限生機。
可見、性天未常枯槁、機神最宜触発。

万籟(ばんらい)寂寥(せきりょう)の中(うち)、忽(たちま)ち一鳥(いっちょう)の弄声(ろうせい)を聞(き)けば、便(すなわ)ち許多(きょた)の幽趣(ゆうしゅ)を喚(よ)び起(お)こす。
万卉(ばんき)の推剥(さいはく)の後(のち)、忽(たちま)ち一枝(いっし)の擢秀(たくしゅう)を見(み)れば、便(すなわ)ち無限(むげん)の生機(せいき)を触(ふ)れ動(うご)かす。
見(み)るべし、性天(せいてん)未(いま)だ常(つね)に枯槁(ここう)せず、機神(きしん)最(もっと)も宜(よろ)しく触発(しょくはつ)すべきことを。

あらゆる音が静まった中で、一羽の鳥の囀りを聞けば、味わい深い優雅を感じさせる。
あらゆる草花が萎んでしまった後で、一本にだけ花が残っているを見ると、無限の生命力を起させる。
これらの事から、人間の本性は、枯れ切らせてしまうのではなく、内に無限の生気を蓄えていてこそ素晴らしい。
つまり、悟るということは何もかもを諦めるというようなものではなく、大自然の本質を「悟る」ことであり、そこには大安心の心がイキイキと機能しているのだ。
言換えれば、達人は、内に力を秘めつつ、淡々と暮せる心境を修得していることだろうお。
慧智(030721)