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■前集29項

憂勤是美徳、太苦則無以適性怡情。
澹泊是高風、太枯則無以済人利物。

憂勤(ゆうきん)は是(こ)れ美徳(びとく)なるも、太(あまり)に苦しめば、則(すなわ)ち以(も)って性(さが)に適(かな)い怡(よろこ)ばしむること無し。
澹泊(たんぱく)は是(こ)れ高風(こうふう)なるも、太(あまり)に枯(か)るれば、則(すなわ)ち以(も)て人を済(すく)い物(もの)を利(り)すること無し。

工夫や努力をしながら働くことは素晴らしいことだが、工夫も努力も度を越せば、心に余裕をなくし、働く楽しみが奪われてしまうだろう。
また、拘らず、囚われず暮らすことは無欲に通じて素晴らしいことだが、無欲が度を越せば、無欲の本質すら忘れて社会貢献の意思も失ってしまうだろう。
つまり、活人は、奪わずして与え、与えて奪わずという心境を持っていなければならないのだ。言い換えれば、活人は、大欲を無欲に転換しても与え続けることを忘れてはならないのである。