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■前集78項

泛駕之馬、可就駆馳。躍冶之金、終帰型範。
只一優游不振、便終身無個進歩。
白沙云、為人多病未足羞。
一生無病是吾憂。
真確論也。

泛駕(ほうが)の馬も駆馳(ちく)に就(つ)くべし。躍冶(やくや)の金(きん)も終(つい)に型範(けいはん)に帰す。
只(ただ)一(いつ)に優游(ゆうゆう)して振(ふる)わざれば、更(すなわ)ち終身(しゅうしん)個(こ)の進歩無(しんぽな)し。
白沙(はくさ)云(い)う、「人と為(な)り多病(たびょう)なるは、未だ羞(は)ずるに足らず、一生病(やまい)無きは、是れ吾(わ)が憂(うれ)いなり」と。
真(まこと)に確論(かくろん)なり。

馬車を転倒させるほどの暴れ馬でも扱えるし、扱い辛い金属も鋳型にはめられる。しかし、ブラブラしていている人間は扱い易いが、一生涯、進歩しない。
「生れながらに病弱なのを恥ずかしがることはないが、生涯病気知らずの方が心配だ」と陳白砂(明代の儒者)が言った事は本当だ。
つまり、多少問題があって解決してゆく方が進歩的で、問題の無いのは危険を内包しているので不安ですよ、ということ。
言い換えれば、活人は満ち足りてはいけないと言うことだ。
慧智(030610)