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■前集83項

風来疎竹、風過而竹不留声。
雁度寒潭、雁去而潭不留影。
故君子、事来而心始現、事去而心随空。

風、疎竹(そちく)に来たるも、風過ぎて竹に声を留めず。
雁(かり)、寒潭(かんたん)を度るも、雁去りて潭(ふち)に影を留めず。
故に、君子は事(こと)来たりて、心に始めて現われ、事去りて心随(したが)って空し。

風はまばらな竹林に吹きこんでもサラサラと音をさせるが、風が止めば静かなもの。
雁(かり)が川を飛び越えて飛んでいれば、川面の影を落とすが、通り過ぎてしまえば影は川面にない。
つまり、上に立つ立派な者は、時に及んで心を動かすが、時が過ぎればさっぱりと忘れる。
言い換えれば、活人は、その時その時、その瞬間瞬間を大事にして、過ぎたことに囚われてはいけない、ということ。一日一生として生きろということ。
慧智(030611)