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■前集164項

勤者敏於徳義。
而世人借勤、以済其貧。
倹者淡於貨利。
而世人仮、倹以飾其吝。
君子持身之符、反為小人営私之具矣。
惜哉。

勤(きん)は徳義(とくぎ)に敏(つと)む。
而(しか)るに世人(せじん)は勤(きん)を借(か)りて以(もつ)て其の貧(ひん)を済(すく)う。
倹(けん)は貨利(かり)に淡し。
而(しか)して世人(せじん)は倹(けん)を仮(か)りて以て其の吝()りんを飾(かざ)る。
君子(くんし)、身(み)を持(じ)するの符(ふ)は、反(かえ)りて小人(しょうじん)の私(わたし)を営(いとな)むの具(ぐ)と為(な)れり。
惜(お)しいかな。

勤勉ということは、道徳の実践に励むことである。
しかし、俗人は、勤勉の名を借りて、貧乏を脱出する事ばかりを考える。
倹約ということは、財産に淡白であることを言う。
しかし、俗人は、倹約の名を借りて、自分のケチを正当化する口実にしている。
人の上に立つ者にが自分を守る、この勤勉と倹約は、今や俗人の私利私欲を量(はか)る道具になってしまっている。
何とも残念なことだ。
つまり、勤勉と倹約という言葉を勝手に解釈している俗人は、自分の心の在り様を誤解し、都合の良いように言葉を使う。
言換えれば、活人は、言葉の意味を正確に知り、自分勝手に解釈しないことだ。
慧智(030626)