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■後集74項

胸中既無半点物欲、已如雪消炉焔氷消日。
眼前自有一段空明、時見月在青天影在波。

胸中(きょうちゅう)既(すで)に半点(はんてん)の物欲(ぶつよく)無(な)くば、已(すで)に雪(ゆき)の炉焔(ろえん)に消(き)え、氷(こおり)日(ひ)に消(き)ゆるが如(ごと)し。
眼前(がんぜん)自(おのず)と一段(いちだん)の空明(くうめい)有(あ)らば、時(とき)に月(つき)青天(せいてん)に在(あ)り、影(かげ)波(なみ)に在(あ)るを見る。

心に物欲の微塵も無いということは、雪がいろりの火に融け、氷が太陽にかき消された状態と同じだ。
目の前が自然に開けて明るくなるということは、月が澄みきった空に出ていて月影が波間に映るように波も静かな状態にあるということだ。
つまり、物欲を完全に無くせば、世界は完璧な状態を見せてくれるということであり、現世にいて彼岸にあるのと同じ状態を体験できるのだ。
言換えれば、物欲と決別した達人の世界は、例えそこがどんな場所でも、大安心の涅槃世界だということを理解しておこう。
慧智(030718)