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■後集80項

飽諳世味、一任覆雨翻雲、総慵開眼。
会尽人情、随教呼牛喚馬、只是点頭。

世味(せみ)飽(あ)くまで諳(そら)んずれば、覆雨翻雲(ふくうへんうん)に一任(いちにん)し、総(すべ)て眼(め)を開(ひら)くに慵(ものう)し。
人情(にんじょう)を会(え)し尽(つく)くさば、牛(うし)を呼(よ)び馬(うま)と喚(よ)ぶに、随教(ずいきょう)し、只(ただ)是(これ)点頭(てんとう)す。

世間の実体を知り尽くしてしまえば、雨だ曇りだとコロコロ変る人情に触れないように、目を開いて見ることすら面倒なものだ。
人情の実体を知り尽くしてしまえば、馬だ、牛だと呼ばれても言わしておき、只只、ハイハイと、返事をしているだけ。
つまり、世の中の事、人間の事を知り尽くしてしまった達人は、一般論としては目を瞑り、頷いているだけだが、さらに修養を積むと、目を開け、生半可な質問には隠して逃げ、から返事で逃げるのっでは達人の入り口のようなもので、本当の達人は目を開いて、是々非々ははっきりしている人間だろう。
慧智(030720)