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■後集82項

意所偶会、便成佳境、物出天然、纔見真機。
若加一分調停布置、趣味便減矣。
白氏云、意随無事適、風逐自然清。
有味哉、其言之也。

意(い)の偶会(ぐうかい)する所(ところ)、便(すなわ)ち佳境(けいきょう)を成(な)し、物(もの)は天然(てんねん)に出(い)でて、纔(わずか)に真機(しんき)を見(み)る。
もし一分(いちぶん)の調停(ちょうてい)布置(ふち)を加(くわ)うれば、趣味(しゅみ)便(すなわ)ち減(げん)ず。
白(はく)氏(し)云(い)う、「意(い)無事(ぶじ)に随(した)がいて適(てき)し、風(かぜ)自然(しぜん)を逐(お)いて清(きよ)し」。
味(あじ)有(あ)るかな、其(そ)の之(これ)を言(い)うや。

心と現実が偶然にピタリと共振した状態の場所を「桂境」といい、物が本来の状態で在り、真気が働いている。
もし仮にほんの少しでも人為的に力を加えれば、真気は乱れ、桂境は失われてしまう。
白楽天は、心は感情が動かない状態が最も良く、風は自然に吹いてくるものこそ清清しい。
何と味わいがある表現だろう。
つまり、悟りの境地とは「心が自然な状態にあり人為を加えていない状態」なのだであり、そしが心が最高の状態であり、「無事(人為的な分別が動いていない自然な状態)」こそが真理なのだ。
言換えれば、心の最高の状態とは、達人が日々ある状態を言う「無事是貴人」である。
翻って言えば、達人は貴人と同義なのだ。
慧智(030721)