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■後集110項

機息時、便有月到風来、不必苦海人世。
心遠処、自無車塵馬迹、何須痼疾丘山。

機(き)息(や)む時(とき)、便(すなわ)ち月(つき)に到(いた)り風(かぜ)来(き)たる有(あ)り、必(かなら)ずしも苦海(くかい)の人世(じんせ)ならず。
心(しん)遠(とお)き処(ところ)、自(おのず)から車(くるま)に馬(うま)塵(よご)れ迹(たず)ねること無(な)く、何(なん)ぞ痼疾(こしつ)の丘山(くうざん)を須(もち)いん。

意図的に動かそうとする心が無くなると、月は清く輝き、風は清清しく吹いて来て、この世は必ずしも苦しみ世界では無くなる。
心が名誉や利益を求めないと、自然と来客が遠のくのだから、何で人里はなれた所に居を移す必要があるものだろうか。
つまり、場所の議論ではなく、心の議論なのである。
言換えれば、達人の幸不幸は、都会の喧騒の中に暮していようと、山村で隠居していようと、要は心の在り方で全て決まるということだ。
慧智(030725)