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■後集115項

無風月花柳、不成造化。
無情欲嗜好、不成心体。
只以我転物、不以物役我、則嗜慾莫非天機、塵情即是理境矣。

風月(ふうげつ)花柳(かりゅう)無(な)くば、造化(ぞうか)を成(な)さず。
情欲(じょうよく)嗜好(しこう)無(な)くば、心体(しんたい)を成(な)さず。
只(ただ)我(われ)を以(もっ)て物(もの)を転(てん)じ、物(もの)を以(もっ)て我(われ)を役(えき)せざれば、則(すなわ)ち嗜慾(しよく)も天機(てんき)に非(あら)ざるは莫(な)く、塵情(じんじょう)も即(すなわ)ち是(こ)れ理境(りきょう)なり。

風や月や花や木々という移ろい変化する物が無ければ、自然は成り立たない。
感情や欲望、好き嫌いが無ければ、人間の営みは成り立たない。
あくまでも、自分が主体となって物事に関われば、感情も人間として自然な
要素で無い事は無く、世俗にあっても理想郷に生きることができる。
つまり、人間は自分を取り囲んでいる物事に振り回されていれば理想郷に在っても俗世間といるように心は乱され、自分が主体となって物事に影響を与えていれば俗世間に居ても理想郷にいるのと同じことだと言っている。
言い換えれば、達人は全ての物事の主体として存在できれば何処に居ようと達理想郷であり、物事に振り回されている状態で何処に居て一喜一憂する俗世間に居るのと同じだという事を覚えておこう。
慧智(030727)