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■後集94項

以我転物者、得固不喜、失亦不憂、大地尽属逍遥。
以物役我者、逆固生憎、順亦生愛、一毛便生纏縛。

我(われ)を以(もっ)て物(もの)を転(てん)ずる者(もの)は、得(とく)も個(もと)より喜(よろ)ばず、失(しつ)も亦(また)憂(うれ)えず、大地(だいち)尽(ことごと)く逍遥(しょうよう)に属(ぞく)す。
物(もの)を以(もっ)て我(われ)を役(えき)する者(もの)は、逆(ぎゃく)は固(もと)より憎(ぞう)を生(しょう)じ、順(じゅん)も亦(また)愛(あい)を生(しょう)じ、一毛(いちもう)も便(すなわ)ち纒縛(てんぱく)を生(しょう)ず。

自分が主体となって物事に働きかける者は、上手くいっても取り立てて喜ばないし、失敗しても取り立てて嘆きはせず、大地のような心境で悠然としている。
物事が主体となって自分に働きかけれれている者は、逆境になれば、他を憎み、上手く行けば執着し、極めて些細な事にでも拘り囚われ、身動きが出来ない。
つまり、人間は自立していれば自然体の世界の住人として悠然と生きてゆけるが、自立できず依存した生き方をしていれば、他責の世界の住人として一生苦しみ続けるのである。
言い換えれば、達人とは自立した自然体の世界の住人なのである。
慧智(030723)