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■後集97項

試思未生之前有何象貌、又思既死之後作何景色、則万念灰冷、一性寂然、自可超物外遊象先。

試(こころ)みに未(いま)だ生(しょう)ぜざるの前(まえ)に、何(なん)の象貌(しょうぼう)有(ある)かを思(おも)い、又(また)既(すで)に死(し)するの後(のち)に何(なん)の景色(けしき)を作(な)すかを思(おも)わば、則(すなわ)ち万念(ばんねん)は灰冷(かいれい)し、一性(いっしょう)は寂然(じゃくねん)として、自(おのず)から物(もの)外(そと)に超え、象(しょう)の先(さき)に遊(あそ)ぶべし。

試しに、自分が生れる前はどんな姿だったか考え、死んでしまった後はどんな姿なのかを考えれば、全ての雑念は燃え尽きて冷たくなった灰のようになり、本来の心のみが静かに自然な形で湧き上がり、物と心の二元論的考えが超越でき、現象世界の更に先にある真実の世界に生きることがきる。
つまり、禅の公案でいう「父母未生以前の本来の面目を知る」というのとほぼ同義で、この世の全ては形を変えて現象しているだけで、宇宙の原理原則は生まれ変わり死に変わりで、何も増えないし、何も減らないということ。現象の永久運動を暗喩している。正に物理学の基本法則を示している。
言換えれば、達人は、薄っぺらな知識、薄っぺらな道徳観なのに囚われ拘るのではなく、本質である万象の原理原則を理解して生きなさいと言っているのだ。
慧智(030724)