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■後集99項

優人傅粉調硃、效妍醜於毫端、俄而歌残場罷、妍醜何在。
弈者争先競後、較雌雄於着子、俄而局尽子収、雌雄安在。

優人(ゆうじん)、粉(ふん)を傅(つ)け硃(しゅ)を調(ととの)え、研醜(けんしゅう)を毫端(ごうたん)に效(いた)すも、俄(にわか)にして歌(うた)残(のこ)り、場(ば)罷(や)まば、研醜(けんしゅう)何(なん)ぞ在(そん)せん。
弈者(えきしゃ)、先(さき)を争(あらそ)い後(のち)競(きそ)い、雌雄(しゆう)を着子(ちゃくし)に較(くら)ぶるも、俄(にわか)にして局(きょく)尽(つ)き子(こ)収(おさ)むれば、雌雄(しゆう)安(いずく)にか在(あ)らん。

歌が終わり舞台が跳ねれば、美醜は跡形もない。
碁打ちが先手を争って勝負に出て、勝敗を競っていても、対極が終わり、碁石俳優に白粉を塗り、紅を注して化粧をさせて、美醜を筆先作り出しているが、を片付ければ、勝負はどこにもない。
つまり、何事も瞬間的な幻影であり、本質は本来、無対立の静かな世界だということ。
言換えれば、達人たる者は、現前する現象に一喜一憂する空しさを知っておきなさいと言える。
慧智(030724)