■前集61項
春至時和、花尚鋪一段好色、鳥且囀幾句好音。
士君子幸列頭角、復遇温飽。
不思立好言行好事、雖是在世百年、拾以未生一日。
春至(はるいた)り時和(ときやわら)げば、花尚一段(なおいちだん)の好色を鋪(し)き、鳥すら且(か)つ幾句(いくく)の好音(こうおん)を囀(さえず)る。
士君子(しくんし)、幸(さいわい)に頭角(とうかく)を列(つら)ね、復(ま)た温飽(おんぽう)に遇(あ)うも、好言(こうげん)を立て、好事(こうじ)を行(おこな)を思わざれば、是(こ)れ世に存(あ)ること百年なりと雖(いえど)も、恰(あたか)も未(いま)だ一日をも生きざるに似たり。