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2006年03月09日

■前集181項

誇逞功業、炫燿文章、靠皆是外物做人。
不知心体螢然、本来不失、即無寸功隻字、亦自有堂堂正正做人処。

功業(こうぎょう)に誇逞(こてい)し、文章(ぶんしょう)を炫燿(げんしょう)するは、皆是(みなこ)れ外物(がいぶつ)に靠(よ)りて人(ひと)と做(なる)なり。
知らず、心体螢然(しんたいけいぜん)として、本来(ほんらい)を失(うしな)わざれば、即(すなわ)ち寸功隻字(すんこうせきじ)無きも、亦(また)自(おのず)から堂々正々(どうどうせいせい)として、人と做(なる)の処(ところ)有るを。

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■前集182項

忙裡要偸閒、須先向閒時討個欛柄。
閙中要取静、須先従静処立個主宰。
不然、未有不因境而遷、随事而靡者。

忙裡(ぼうり)に閒(かん)を偸(ぬす)まんを要(よう)さば、須(すべか)らく先(ま)ず閒事(かんじ)に個(こ)の欛柄(はへい)を討(たず)ぬべし。
閙中(どうちゅう)に静(せい)を取(と)らんことを要(よう)さば、須(すべか)らく先(ま)ず静処(せいしょ)より個(こ)の主宰(しゅさい)を立(た)つべし。
然(しか)らざれば、未(いま)だ境(きょう)に困(よ)りて遷(うつ)り、事(じ)に随(したが)いて靡(なび)かざる者(もの)有(あ)らず。

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■前集183項

不昧己心、不尽人情、不竭物力。
三者可以為天地立心、為生民立命、為子孫造福。

己(おのれ)の心を昧(くら)まさず、人の情(じょう)を尽(つく)さず、物(もの)の力(ちから)を竭(つく)さず。
三者、「以(もつ)て天地(てんち)の為(ため)に心(こころ)を立(た)て、生民(せいみん)の為(ため)に命(いのち)を立(た)て、子孫(しそん)の為(ため)に福(ふく)を造(な)すべし。

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■前集184項

居官有二語、曰惟公則生明、惟廉則生威。
居家有二語、曰惟恕則情平、惟倹則用足。

官(かん)に居(お)るに二語(にご)あり、曰(いわ)く、「惟(ただ)公(こう)ならば、則(すなわ)ち明(めい)を生(しょう)じ、惟(ただ)廉(れん)なれば則(すなわ)ち威(い)を生(しょう)ず」。
家(いえ)に居(お)るに二語(にご)あり、曰(いわ)く、「惟(ただ)恕(じょ)ならば、則(すなわ)ち情(じょう)平(たい)らかに、惟(ただ)倹(けん)なれば則(すなわ)ち用(よう)足(た)る」。

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■前集185項

処富貴之地、要知貧賤的痛癢、当少壮之時、須念衰老的辛酸。

富貴(ふき)の地(ち)に処(お)りては、貧賤(にんせん)の痛癢(つうよう)を知(し)らんことを要(よう)し、少壮(しょうそう)の時(とき)に当(あた)りては、須(すべか)らく衰老(すいろう)の辛酸(しんさん)を念(おも)うべし。

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■前集186項

持身不可太皎潔。
一切汚辱垢穢、要茹納得。
与人不可太分明。
一切善悪賢愚、要包容得。

身(み)を持(じ)するに太(はなは)だ皎潔(こうけつ)なるべからず。
一切(いっさい)の汚辱垢穢(おじょくこうあい)をも茹納(じょうのう)し得(え)んことを要(よう)す。
人(ひと)に与(くみ)するには太(はなは)だ分明なるべからず。
一切の善悪賢愚(ぜんあくけんぐ)をも、包容(ほうよう)し得(え)んことを要す。

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■前集187項

休与小人仇讐。
小人自有対頭。
休向君子諂媚。
君子原無私恵。

小人(しょうじん)と仇讐(きゅうしゅう)することを休(や)めよ。
小人(しょうじん)は自(おの)ずから対頭(たいとう)有り。
君子(くんし)に向(む)かって諂媚(てんぴ)することを休(や)めよ。
君子(くんし)は原(もと)もと私恵(しけい)無し。

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■前集188項

縦欲之病可医、而執理之病難医。
事物之障可除、而義理之障難除。

欲を縦(ほしいまま)にする病(やまい)いは医(いや)すべくも、而(しか)して理(り)に執(とら)わるるの病(やまい)は医(いや)し難(がた)し。事物(じぶつ)の障(すわ)りは除(のぞ)くべくも、而(しか)して義理(ぎり)の障(すわり)は除(のぞ)き難(がた)し。

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■前集189項

磨蠣当如百煉之金、急就者非邃養。
施為宜似千鈞之弩、軽発者無宏功。

磨蠣(まれい)は当(まさ)に百煉(ひゃくれん)の金(きん)の如く、急就(きゅうしゅう)は邃養(すいよう)に非(あら)ず。
施為(しい)は宜(よろ)しく千鈞(せんきん)の弩(ど)の似(ごと)く、軽発(けいはつ)は宏功(こうこう)無し。

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■前集190項

寧為小人所忌毀、毋為小人所媚悦。
寧為君子所責修、毋為君子所包容。

寧(むしろ)小人(しょうじん)の忌毀(きき)せらるるも、小人(しょうじん)の媚悦(びえつ)せらるること毋(なか)れ。
寧(むしろ)君子(くんし)の責修(せきしゅう)せらるるも、君子(くんし)の包容(ほうよう)せらるること毋(なか)れ。

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■前集191項

好利者、逸出於道義之外、其害顕而浅。
好名者、竄入於道義之中、其害隠而深。

利(り)を好(この)む者(もの)、道義(どうぎ)の外(そと)に逸出(いっしゅつ)し、其の害(がい)顕(あら)わるるは浅(あさ)し。
名(な)を好(この)む者は、道義(どうぎ)の中(うち)に竄入(ざんにゅう)し、其の害(がい)隠(かく)るるは深し。

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■前集192項

受人之恩、雖深不報、怨則浅亦報之。
聞人之悪、雖隠不疑、善則顕亦疑之。
此刻之極、薄之尤也、宜切戒之。

人(ひと)の恩(おん)を受(う)けては、深(ふか)しと雖(いえど)も報(ほう)ぜず、怨(うらみ)みは則(すなわ)ち浅(あ)きも亦之(またこれ)を報(ほう)ず。
人の悪(あく)を聞(き)いては、隠(かく)るると雖(いえど)も疑(うたが)わず。善はすなわち顕(あら)わるるも亦之(またこれ)を疑う。
此れ刻(こく)の極にて、薄(はく)の尤(ゆう)なり、宜(よろ)しく切(せつ)に此れを戒(いまし)むべし。

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■前集193項

讃夫毀士、如寸雲蔽日、不久自明。
媚子阿人、似隙風侵肌、不覚其損。

讃夫毀士(ざんぷきし)は、寸雲(すんうん)の日(ひ)を蔽(おお)うが如(ごと)く、久(ひさ)しからずして自(おのず)から明(あき)らかなり。
媚子阿人(びしあじん)は、隙風(げきふう)の肌(はだ)を侵(おか)すに似(に)て、その損(そん)を覚(おぼ)えず。

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■前集194項

山之高峻処無木、而谿谷廻環、則草木叢生。
水之湍急処無魚、而渕潭停蓄、則魚鼈聚集。
此高絶之行、褊急之衷、君子重有戒焉。

山(やま)の高峻(こうしゅう)なる処(ところ)に木(き)無く、而(しか)るに、谿谷廻環(けいこくかいかん)すれば、草木叢生(そうもくそうせい)す。
水(みず)の湍急(たんきゅう)なる処(ところ)に魚(さかな)無く、而(しか)るに、渕潭停蓄(えんたんていちく)すれば、魚鼈聚集(ぎょべつしゅうしゅう)す。
此の高絶(こうぜつ)の行(こう)、褊急(へんきゅう)の衷(ちゅう)は、君子(くんし)、重(かさ)ねて戒(いまし)むる有り。

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■前集195項

建功立業者、多虚円之士。
僨事失機者、必執拗之人。

功(こう)を建(た)て業(ぎょう)を立(た)つる者は、多(おお)くは虚円(きょえん)の士(し)なり。
事(こと)を僨(やぶ)り機(き)を失(うしな)う者は、必ず執拗(しつよう)の人なり。

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■前集196項

処世、不宜与俗同、亦不宜与俗異。
作事、不宜令人厭、亦不宜令人喜。

世(よ)に処(お)るには、宜(よろ)しく俗(ぞく)と同(どう)ずべからず、亦(また)宜(よろ)しく俗(ぞく)と異(い)なるべからず。
事(こと)を作(な)すには、宜(よろ)しく人をして厭(いと)わしむべからず、亦(また)宜(よろ)しく人をして喜(よろこ)ばしむべからず。

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■前集197項

日既暮、而猶烟霞絢爛。
歳将晩、而更橙橘芳馨。
故末路晩年、君子更宜精神百倍。

日(ひ)既(すで)に暮れ、而(しか)も猶(な)お烟霞絢爛(えんかけんれん)たり。
歳(とし)将(まさ)に晩(く)れんとし、而(しか)も更(さら)に橙橘芳馨(とうきほうけい)たり。
故(ゆえ)に末路晩年(まつろばんねん)には、君子(くんし)更(さら)に宜(よろ)しく精神百倍(せいしんひゃくばい)すべし。

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■前集198項

鷹立如睡、虎行似病。
正是他攫人噬人手段処。
故君子、要聡明不露、才華不逞。
纔有肩鴻任鉅的力量。

鷹(たか)の立(た)つや、睡(ねむ)るが如(ごと)く、虎(とら)の行(ゆ)くや病(や)むに似(に)たり。
正(まさ)に是(こ)れ他(かれ)の人(ひと)を攫(つか)み、人(ひと)を噬(か)む手段(しゅだん)の処(ところ)なり。
故(ゆえ)に君子(くんし)は、聡明(そうめい)を露(あら)わさず、才華(さいか)を逞(たくま)しくせざるを要す。
纔(わず)かに肩鴻任鉅(けんこうにんきょ)の力量(りきりょう)有(あ)り。

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■前集199項

倹美徳也。
過則為慳吝、為鄙嗇、反傷雅道。
譲懿行也。
過則為足恭、為曲謹、多出機心。

倹(けん)は美徳(びとく)なり。
過(す)ぐれば則(すなわ)ち慳吝(けんりん)となりて、鄙嗇(ほしょう)となり、反(かえ)りて雅道(がどう)を傷(やぶ)る。
譲(じょう)は懿行(いこう)なり。
過(す)ぐれば即(すなわ)ち足恭(すうきょう)となりて、曲謹(きょっきん)となり、多(おお)くは機心(きしん)に出(い)ず。

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■前集200項

毋憂払意、毋喜快心。
毋恃久安、毋憚初難。

払意(ふつい)を憂(うれ)うこと毋(なか)れ、快心(かいしん)を喜(よろこ)ぶこと毋(なか)れ。
久安(きゅうあん)を恃(たの)むこと毋(なか)れ。初難(しょなん)を憚(はばか)ること毋(なか)れ。

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■前集201項

飲宴之楽多、不是個好人家。
声華之習勝、不是個好士子。
名位之念重、不是個好臣工。

飲宴(いんえん)の楽しみ多きは、是れ個(こ)の好人家(こうじんか)にあらず。
声華(せいか)の習(なら)い勝(まさ)れるは、是れ個の好士子(こうしし)にあらず。
名位(かくい)の念(ねん)の重(おも)きは、是れ個の好臣工(こうしんこう)にあらず。

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■前集202項

世人以心肯処為楽、却被楽心引在苦処。
達士以心払処為楽、終為苦心換得楽来。

世人(せじん)は、心の肯(うけが)う処(ところ)を以(もつ)て楽しみと為(な)し、却(かえ)って楽心(らくしん)に引(ひ)かれて苦処(くしょ)に在(あ)り。
達士(たっし)は、心の払(もと)る処(ところ)を以(もつ)て楽しみと為(な)し、終(つい)に苦心(くしん)を楽しみに換(か)え得(え)て来(き)たると為(な)す。

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■前集203項

居盈満者、如水之将溢未溢。
切忌再加一滴。
処危急者、如木之将折未折。
切忌再加一搦。

盈満(えいまん)に居(お)る者(もの)は、水(みず)の将(まさ)に溢(あふ)れんとして、未(いま)だ溢(あふ)れざるが如(ごと)し。
切(せつ)に再(ふたた)び一滴(いってき)を加(くわ)うることを忌(い)む。
危急(ききゅう)に処(お)る者(もの)は、木(き)の将(まさ)に折(お)れんとして未(いま)だ折(お)れざるが如(ごと)し。
切(せつ)に再(ふたた)び一搦(いちじゃく)を加(くわ)うることを忌(い)む。

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■前集204項

冷眼観人、冷耳聴語、冷情当感、冷心思理。

冷眼(れいがん)にて人(ひと)を観(み)、冷耳(れいじ)にて語(ご)を聴(き)き、冷情(れいじょ)にて感(かん)に当(あた)り、冷心(れいしん)にて理(り)を思(おも)う。

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■前集205項

仁人心地寛舒、便福厚而慶長、事事成個寛舒気象。
鄙夫念頭迫促、便禄薄而沢短、事事得個迫促規模。

仁人(じんじん)は、心地寛舒(しんちかんじょ)なれば、便(すなわ)ち福(ふく)厚(あつ)くして慶(けい)長(なが)く、事々(じじ)に個(こ)の寛舒(かんじょ)の気象(きしょう)を成(な)す。
鄙夫(ひふ)は、念頭迫促(ねんとうはくそく)なれば、便(すなわ)ち禄薄(ろくすう)くして沢(たく)短(みじか)く、事々(じじ)に個(こ)の迫促(はくそく)の規模(きぼ)を得(う)。

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■前集206項

聞悪不可就悪、恐為纔夫洩怒。
聞善不可急親、恐引奸人進身。

悪(あく)を聞(き)いては、就(すなわ)ち悪(にく)むべからず、恐(おそ)らくは纔夫(ざんぶ)の怒(いか)りを洩(も)らすを為(な)さん。
善(ぜん)を聞(き)いては、急(きゅう)に親(した)しむべからず、恐(おそ)らくは奸人(かんじん)の身(み)を進(すす)むるを引(まね)かん。

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■前集207項

性燥心粗者、一事無成。
心和気平者、百福自集。

性(しょう)燥(かわ)き、心(こころ)粗(そ)なる者は、一事(いいじ)も成(な)すこと無し。
心(こころ)和(やわら)ぎ、気(き)平(たい)らかなる者は、百福(ひゃくふく)自(おの)ずから集(あつ)まる。

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■前集208項

用人不宜刻。
刻則思効者去。
交友不宜濫。
濫則貢諛者来。

人(ひと)を用(もち)うるには、宜(よろ)しく刻(こく)なるべからず。刻(こく)なれば則(すなわ)ち、効(こう)を思(おも)う者(もの)は去(さ)らん。
友(とも)に交(まじ)わるには、宜(よろ)しく濫(らん)なるべからず。
濫(らん)なれば則(すなわ)ち、諛(ゆ)を貢(こう)する者(もの)来(き)たらん。

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■前集209項

風斜雨急処、要立得脚定。
花濃柳艶処、要着得眼高。
路危径険処、要回得頭早。

風(かぜ)斜(なな)めに雨(あめ)急(きゅう)なる処(ところ)は、脚(あし)を立(た)ち得(え)て定(さだ)めんことを要(よう)す。
花(はな)濃(こま)やかに柳(やなぎ)艶(えん)なる処(ところ)は、眼(め)を着(つ)け得(え)て高(たか)らんことを要(よう)す。
路(みち)危(あや)うく径(こみち)険(けわ)しき処(ところ)は、頭(あたま)を回(めぐ)らし得(え)て早(はや)からんことを要(よう)す。

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■前集210項

節義之人済以和衷、纔不啓忿争之路。
功名之士承以謙徳、方不開嫉妬之門。

節義(せつぎ)の人(ひと)は、済(すく)うに和衷(わちゅう)を以(もっ)てせば、纔(わず)かに忿争(ふんそう)の路(みち)を啓(ひら)かず。
功名(こうめい)の士(し)は、承(う)くるに謙徳(けんとく)を以(もっ)てせば、方(ま)さに嫉妬(しっと)の門(もん)を開(ひら)かず。

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